木造普賢延命菩薩坐像
天堂の内陣に安置される厨子内にまつられる。
釈迦如来の脇侍としての造像例も多い普賢菩薩は、胎蔵界曼荼羅では中台八葉院と文殊院に描かれている。普賢菩薩がさらに密教化した尊像が普賢延命菩薩とされ、延命を目的とした普賢延命法の本尊として用いられる。
正圓寺像は、一面二〇臂像である。宝髻をあらわし、髪は群青で彩色する。金銅製の宝冠を戴く。彫眼像であり、白毫相は白土であらわし、口唇には朱が入る。肉身部はくすんだ褐色地で彩色し、衣部には截金で文様を施す。白く彩色する仰蓮の上に結跏趺坐する。仰蓮は、雲を象った受座、円框、反花を伴っており、四頭の白象の上に乗る。白象の頭部には四天王が配されていたと思われるが、現在はその一躯のみが残っている。さらに白象四躯は、円框、四二躯の小さな白象を放射状に配した受座、反花、円框を台座とする。銘記は確認できない。製作年代は江戸時代と考えられ、普賢延命菩薩の彫像の実作例として、希少な史料である。
(大阪密教美術保存会「正圓寺の仏像について」より抜粋)