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絹本著色歓喜天曼荼羅図

正圓寺に伝来する、大阪市指定文化財となっている仏画群の一幅である。

「高野山西南院ヨリ請来 聖天曼荼羅 昭和卅九年五月表具修復 旭範代」

この記銘から、一九六四年に、高野山西南院から、正圓寺に請来されたことがわかる。

歓喜天曼荼羅は『大聖歡喜雙身毘那夜迦天形像品儀軌』や『聖歓喜天式法』などを儀軌とする別尊曼荼羅であり、現世利益などを目的とした修法の本尊として用いられる。実作の事例としては、室町時代にさかのぼる事例の個人本が知られている。図様は、内院には画面中央の蓮台上に双身像を描き、上下左右に広がった赤い蓮弁に象頭神を四躯あらわす。蓮弁の背後には大きな輪宝を描き、四隅には宝珠を配する。外院には三昧耶形で十二天を配する。さらにその外側となる画面上方中央に、牛に騎乗した自在天、その左右に三昧耶形の宝瓶と三鈷戟をあらわす。画面下方には、中央に宝珠をあらわし、その左に耳の短い象頭神、右に一面六臂の象頭神を配している(林温『別尊曼荼羅』日本の美術四三三 二〇〇二)。

箱書から、高野山から請来されたことがわかるが、金剛峯寺本とは図様は異なっている。制作年代は江戸時代と考えられる。類例の少ない歓喜天曼荼羅の希少な実作例のひとつである。

(大阪密教美術保存会「正圓寺の仏像について」より抜粋)